おどらにゃそんそん

好きなものを摂取しながら楽しく生きたい 異論反論は程々に聞きます

ままならない私の人生-映画「君の顔では泣けない」感想

「よくできていると思う映画」「いい映画」「好きな映画」は全部違うというか、それぞれ評価軸があると思っていて、まぁ私はそれなりに評価がガバいので「よくできていて」「いい映画で」「好きな映画」はちょこちょこあったりする。

が、最近見た映画が「すごくよくできていたと思って」「大変にいい映画で」「とても好きな映画」がだった。ので、是非興味を持ってもらいたくてレビューをしたいと思っている。というか三連休に見てほしくてレビューを書く。(なぜならさっさと劇場公開が終わる可能性があるから!!!気になったら劇場で観て頼むよ!!

 

11.14に公開された、「君の顔では泣けない」だ。

映画『君の顔では泣けない』公式サイト|大ヒット上映中!

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ところでこのタイトルの出方超かっこよくないですか?

 

(ここからは敬称略にします)

芳根京子とKing&Prince髙橋海人のW主演の小説原作のSF(すこしふしぎ)ヒューマンドラマだ。

 

あらすじは以下の通り。

「高校1年生、15歳の夏、ひょんなことから中身が入れ替わってしまった男女、坂平陸と水村まなみ。そのまま元に戻らないまま15年の月日が経った。年1で喫茶店での会う約束の日に、「戻る方法がわかったかも」と水村が言い始める」

な!まず設定が面白そうやんな!ありがちな「入れ替わりモノ」は、だいたいある程度の期間で戻るのが定石だが、なんせ異常事態なので言われてみたら戻らない事もあってもおかしくない。

私もともと入れ替わりモノって結構好きなんですよね。今お気に入りの漫画はクソ女に幸あれで、こちらは一日おきに男女が入れ替わるラブコメです。こちらもついでにおすすめです。

[1話]クソ女に幸あれ - 岸川瑞樹 | 少年ジャンプ+

では感想に入っていこう。

 

ここからは多少のネタバレが含まれます。自己責任で読んでください。できれば読まずに映画館行って帰ってきてから読んでください。(著者故に許される横暴)

あと入れ替わり物でどう呼んでいいか混乱するので、坂平(水村)って書いてあったら、中身坂平外側水村だと思って読んでください。坂平が男の子で水村が女の子です。

 

15歳から30歳の15年、あまりにも激動。

まず当たり前なんだけど、「15年から30年」という期間設定があまりにいい。ある程度ベースの自我はできたものの、かつまだまだ激動思春期真っ只中の「子供」から、「子供を産み育てる大人」になれるような期間なのだ。高校、大学、就職と、人間関係も大きく変わる時期だ。それこそ性的な行為を「15歳までの自分が想像したのとは違う性別でやる」のもある(直接的えっちなシーンはないです)。そんな、「激動の15年」を過ごした先に、「じゃあ戻れるかも」と提示されたところ、どうなる?

「いつか戻るかも」が数日、数カ月、数年経つに連れ、「いつ戻ってもいいように」の情報のやりとりの工夫をしながら、運命の受け入れと諦めをしていった期間であることが丁寧に描かれるのだ。

最初は30歳からスタートして、回想みたいな形で時間軸が結構移動するんですけど、その表現の仕方がオシャレなんだよね……是非確認してきてほしい

また、激動の15年と比較して、2人の秘密の会合場所、喫茶異邦人が時が止まった異空間かのような佇まいがまたとてもいい。途中で男性店員になるのはなんだったのかちょっと気になってはいるが、きっとあの店員の女性はずっとうっすら聞いていて、事情をうっすらと知っていて、そしてそのことを誰にも喋らないのだろう。

 

主演の二人とその少年少女時代の四人の演技が見事でね

見事でねぇ……!!!

特にぐっときたのが髙橋海人。仲いいフォロワーが昔好きだったアイドルだーという認識しかなかったので、演技のうまさに驚いた。

まず、映画開始1分の、彼のファーストショットでしびれた。喫茶店で、芳根京子を待つ背中だ。あらすじは知っていたので、「ああ、男性の中身は女性なんだよな」という前情報はあったものの、それにしても「あ、女性だ」と背中だけで思い知らされて痺れた。逆に言うと「女性っぽく見える座り方」ってちゃんとあるんだ、やっぱりちょっと肩を丸め気味な感じにするのかな、「ジェンダーを感じる姿勢」ってどんなふうなんだろう、と考えてしまうレベルだ。芳根京子もとてもいいが、「あの程度にちょっとぶっきらぼうな女性」はわりと見るものの、「ちょっとフェミニンな男性」って思ったより存在しないから、喫茶店の姿は上手に違和感が出ていたと思う。男性っぽくない、男臭さが薄い、はあっても、なんか女性っぽいだと違和感を受けるんだという自分に驚いた。あとあとのことを思うと、芳根京子の方が「現実にこれくらいの女性いそう」感があるのは「受け入れと諦めが早かった」からかなとも思う。

前半の柔らかい態度の「水村まなみ」だからこそ、後半の叫びが切実で、本当に髙橋海人さんすごかったっす………………

あと芝居が上手い人の会話って聞いていて楽しいというシンプルな感想も出るね。

 

そして坂平、水村の少年少女時代の二人の演技も素晴らしかった。特に坂平(水村)の西川愛莉の自転車を漕ぎづらそうにしている演技は印象に残った。きっとすべてが普段より重く感じるからこそ、あんなぎこちない自転車のシーンになったんだと思う。

 

全員の姿勢がまずジェンダーからズレてるのを感じると指摘してた人もいたから次は歩き方とか注目して見たいなぁ……!

 

「他人ってうまくやってるように見えるよね」だからこそ自分の人生はままならないように思える

意外とこの物語の根底ってこの感情なんじゃないか?と感想をまとめながら思っていた。

ガッツリ中盤のネタバレにはなるが(と思ったが予告見たらふつーに入ってたからいいか)、坂平(水村)は父親の葬式後、坂平家で「お前(まなみ(坂平)は本当に戻りたいのか!?」と問いかけるシーンがある。坂平(水村)は、友人とも高校卒業後もうまくやっており、水村家にも"受け入れられ"ていて、かつ坂平家でもうまくやっている。恋人らしき人もバンバン変わる程度にはモテてまるで男性性を謳歌してるかのように見える。一方、水村(坂平)は、高校の友人関係は気まずくなり、元の家に激しく拒絶されていた。だからこそ、「自分が生きたかもしれない人生」を真横で見せられて、「家族を失ったこと」を当たり散らした。

でも実はそれぞれの実家に行ったときに水村家には2人で行ったが、坂平家には水村の姿一人で行ったらそれは全然態度は違うだろうし、坂平家内も実はその時点ですでに険悪になっていた、つまり水村(坂平)が大学に行くまではうまくいかなかったことが示唆されてもいる。そして何より「家族が奪われた」のも、「拒絶されている」のも、実は水村(見た目は坂平)も同じなんだよなぁ、と思うと大変切ない。でも坂平(見た目は水村)は悲しみと怒りでぐちゃぐちゃになってるからこそそこまで至らずに、そしてついに「運命共同体」の2人が決別する流れになってしまうのだ。(ここの鍵の音も本当ーーーーーに見事ですよねーーーーーー

 

またその後のね!水村(坂平)の会社でのくだりが本当に見事ですよね!坂平(水村)の状態を何も知らない水村(坂平)が「普通に結婚することが夢だった」と語り始める。ここでいう普通の結婚、は明示的には述べられていないが、多分"お嫁さん"なのだ。男性になっていく恐怖について、"恋人"ではない"セフレ"に語るのはやっと誰かに話しちゃってもいいかな、と思えた証だろうか。仕事の疲労からの緩み、そして深夜という時間帯の魔法だろうか。まぁ結局は聞いてはもらえない、孤独な告白になってしまうのだが、そのときの呆れと脱力しちゃった苦笑の表情がよかった。そう、ここの告白では、オフィスの真ん中あたりにいるから表情が見えるのである。坂平(水村)の夢は結婚、だったのに、"セフレ"しか作れない、作らないのもまた切ない点だなと思っている。

その後突如として電話が鳴って、邪魔にならないように窓際に移動する。坂平(水村)から妊娠を告げられたとき、即ち、「もともとの自分の身体で、夢を叶えた先の話」を聞かされたとき、水村(坂平)の表情は絶妙に見えないのだ。オフィスの端っこ、遠くにビル明かりが見えるくらい窓際、小さくつり下げられたオレンジの照明で横顔の輪郭だけがうっすら浮かび上がっている、その瞬間が本当に美しく感じた。

観客だけが「水村(坂平)の本当の夢は女の子の結婚」を知った上で、一番残酷な告白を聞いたときの表情だけは、ほぼ隠されている。これは映像的に本当にうまいなーーーー!!!!と思った。そのあとどんどん、坂平(水村)とのわだかまりをなんとか溶かしていくにつれ、電話をしながらすこし位置を移動することでその表情はすこし悲しみが滲みながらも、電話の先の坂平(水村)を思って笑顔でいるのがあまりにもいじらしくて、この映画の頂点ともいえるシーンだと思った。本当に映画としていいシーンすぎたんですよここ……。もう一回確認したい……

あまりに良すぎたシーンだったのでただのシーン解説をしてしまった……

坂平も水村も、どちらも実は「お前は、いいよな」という気持ちを抱えながら生きてきた。この作品はまぁ入れ替わりというでかいギミックがかんではいるが、きっとそういった嫉妬って、人間誰しも持っているものだと思う。でかいギミックがありながらも、その感情はとてもリアル。俳優陣の名演も相まって、突飛な設定なのに、痛いくらい感情が理解できる、そんな物語体験をくれる作品だと思う。

 

まとめ

俳優陣の演技も見事だし、映像作品として本当に細かい工夫がなされてあって、うわーーーー!!!!丁寧な映画見てるーーーー!!!!!と映画ファンとしてとても幸せになりました。(内容はそこまで幸せ、という内容でもないけど)

原作はちょいちょい違うらしいと聞いて、ちょっと図書館の本倒しきったら原作本もチャレンジしてみようと思うぞ!!!

ということで、私なりの作品レビューでした。ひとえにこれで興味持って三連休の予定にねじ込む人が一人でも増えねえかな!!!!!あと真剣に感想書く人も増えないかな!!!!!という気持ちです。私もTOHOのムビチケ手に入れてるから日曜か月曜2回目行こうと目論見中です。

 

 

おまけ

ラストシーンについての感想つーか考察

https://x.com/asami_jun/status/1991541303503647179?t=QqAmjXg-pROV_96PntiVEA&s=19